小中学生の剣道で突きが禁止されている理由
剣道の有効打突部位は「面・胴・小手・突き」に分類されています。
しかし、「突き」だけは高校生以上からしか打突部位として認められておらず、小中学生の部では禁止されているのです。
いわゆる「禁じ手」として封印されている技ですが、なぜ小中学生は突きを使ってはいけないのでしょうか。
その理由と、注意すべきポイントをお知らせしたいと思います。
1.「突き」は危険な技でもある
結論から言うと、「突き」は剣道の中でもとりわけ危険度の高い技であり、体格が成長しきっていない小中学生には安全上の理由から禁じられているのです。
力が一点に集中する「突き」の威力は絶大なものであり、まともに決まれば成人男性でも後方に飛ばされて怪我をする可能性もあるのです。
また、十分なコントロールに習熟しないと防具の隙間を縫って喉に直接竹刀が入り込んでしまうこともあるため、命に関わる事態にもなりかねません。
したがって、ある程度成長して身体も強靭となってくる高校生以上に限って突き技が認められているのです。
たとえそれでも、大人同士の試合であっても突きの乱用は固く戒められています。
飛びこんできた瞬間に突きが決まり、そのまま後方に激しく転倒して脳しんとうを起こしたりといった事故も実際に発生しています。
小中学生にとっては普段使うことがないからこそ、危険な技としての認識を共有しておきましょう。
2.意図せずとも、「突き」の形になってしまうことがある
突きが禁止されている小中学生の剣道ですが、試合や稽古の流れの中で偶然にも突きの体勢となってしまうことがままあります。
例えばお互いに中段で構え合っている状態から、一方がそのまま打ち込んでいけば自然に喉や胸に相手の剣先が突き立ってしまうこととなります。
練習中であっても勢いが増した状態でそうなると、いわゆる「迎え突き」の形となり、自身の突進力と体重がそのまま跳ね返ってくることとなるため、大けがを招きかねません。
中段の構えは、本来はこのようにそのまま突きに転じることができる攻防一体の構えとして位置付けられており、そのような機能が意図せずに発揮されることがあるのです。
したがって、たとえ突きを使わない小中学生の剣道であっても、十分に攻めて相手の竹刀を中心から外し、「攻め勝って打つ」という稽古を徹底しなくてはなりません。
ついついスピード勝負の雰囲気になりがちですが、やみくもな当て合いに夢中になると上記のような事故を招くことになります。
指導者や先輩が十分に注意して、突きの危険を排除するような正しい剣道に導くことが肝要です。