剣道の手の内の使い方を覚える練習メニュー
剣道ではしきりに「手の内」という言葉を耳にすることと思います。
「手の内」とは竹刀の握り方や、打突の際のスナップのきかせなどの細かい技法を総称したものであり、剣道上達のカギとなる技術の一つでもあります。
「手の内は人に語るな」と昔から言われるほど修得が難しく、各人の工夫・研究によってしか身に付けることができないともされる、いわば「極意」の一種であるとも考えられます。
そんな「手の内」の上手な使い方を覚えるための練習メニューの一例をご紹介しましょう。
1.手の内は単なる「スナップ」のみではない
「手の内」と呼ばれているのは、両掌と手首の繊細なコントロールで竹刀を瞬間的に加速させ、素早く強い打突を生み出す技術のことです。
これはいわゆるマニュアルが存在せず、口伝によるイメージや物の例えなどで語られることが多く、身体操作の方法にも大きな個人差があるため修得を一層困難にしています。
ただし、うまく手の内を使った打ち方ができるようになると剣道が劇的に上達するため、ぜひ越えていきたいハードルでもあります。
ここで注意しておきたいのは、手の内イコール手首のスナップ、という訳ではないことです。
もちろん手首のスナップも重要な要素の一つではありますが、「竹刀そのものに瞬発力と打撃力を伝えるための両手の操作法」と捉えたほうが適切です。
2.「押し手」と「引き手」を意識する
ここに挙げるのは、あくまでも手の内の技術を修得するための一つのヒントとして捉えてください。
修得のイメージには大きな個人差があり、より多くの方法を試して自分に最適なパターンを掴み、各人の工夫を加えることが肝要だからです。
まず、右手と左手にはそれぞれニュアンスの異なる役割が与えられているとイメージしましょう。
あくまで例えですが、右手は「押し手」、左手は「引き手」と位置付けます。
そして右手の下あたりの竹刀の柄に支点があるようなイメージで、瞬間的に右手を押し、同様に左手をやや引くようにして手首のスナップをきかせます。
うまくすると竹刀がムチのようにしなり、剣先にトップスピードが伝わって風切り音が聞こえるようになります。
3.「その場打ち」で実際の打撃感覚を身に付ける
上記のような感覚を掴んだら、今度は中段に構えたままの状態で左拳だけを前に突き出し、剣先のみを振り上げるようにします。
そしてその状態から上記の要領で手の内を使い、面を打つ練習をします。
振り上げる大きさを徐々に狭めていき、最終的には「刺し面」のようなフォームで強く鋭く打てるよう練習を重ねます。
打ち込み台を相手にしたり、対人練習などで基立ちをお願いして実際に面を打つことが望ましいと言えます。
面に慣れてきたら小手や胴も同じ要領で打つ練習をします。
うまく手の内が決まった打ちは剣先のはしりや竹刀のスピード、そして打ちの威力が格段に高まるため、上達を実感する指標ともなります。
「一生の課題」の一つともされる手の内の技術は、たゆまない研鑽によってこそ身に付けることができるものと心がけましょう。